勤務医の労働環境をもっと改善せよ
拘束時間が長く、医療事故の訴訟が多いなどその勤務の過酷さから嫌われる産婦人科や小児科、麻酔科、救急医療といった診療科で働く病院勤務医の労働環境を改善しなければならない。
開業医の年収は勤務医の1.8倍にも上るといわれる。この問題を解消するためにこれまでも、診療報酬面で勤務医の収入を引き上げ、その分、開業医の診療報酬を引き下げてきた。いま、来年度の診療報酬改訂に向けて議論が真っ盛りだが、さらにこの政策を推し進めるべきだ。
医師を補助する医療クラーク(事務員)制度ももっと充実させたい。能力のある看護師や助産師を育て上げ、医師の仕事量を減らすことも重要だ。
地方の郡部などでは医師が不足している。この地域的偏在を解決するには、前述した問題の臨床研修医制度を臨機応変にその都度、見直していく必要がある。研修医が都市部に集中し、医師不足を表面化させた元凶だからだ。
読売社説だけが「医師の偏在対策」をテーマに
ここまで書いてきたところで12月4日付の読売新聞の社説を見てみよう。
テーマが「医師の偏在対策」で、その見出しが「都道府県の調整力が問われる」である。テーマを「医師不足」としていないところは、まずまずである。問題が診療科ごとの偏在と地域的偏在にあるからだ。
読売社説はその冒頭で「地方の医師不足が深刻化している。地域医療を守るために、実効性ある是正策が求められる」と主張し、「厚生労働省の検討会が医師の偏在対策に関する論議を進めている。年内に報告書をまとめる」と書く。
4日の時点で「医師の偏在対策」を社説のテーマに選んだのは読売だけだった。厚労省の検討会による報告書がまとまれば、社説として選ぶ新聞社が多く出てくるだろう。そのときには各紙の社説を読み比べたい。
続けて読売社説は「柱となるのは、都道府県の役割と権限の強化である。医療計画の一環として、医師確保の目標や具体策を盛り込んだ『医師確保計画』の策定を法制化する」と書く。
さらに「確保計画に実効性を持たせるため、都道府県が大学医学部に『地元出身者枠』の設定・増員を要請する権限を設ける。臨床研修を行う病院の指定や定員の設定も、都道府県が担うようにする」と具体的に解説して厚労省の対策を評価する。
だが、果たして都道府県の役割と権限を強めることで医師不足は解決されるのだろうか。