役立ったことをどう表現するか

会議では参加者の発言を聞きながら、それに対して自分がどう発言するか、どう行動するかをノートパソコンに打ち込んでいきます。他人の発言を記録することは99%ありません。経営者は会社の将来を見据えて、さまざまな意思決定を行う責任を負っています。その立場からすると、将来どう行動するかが大事であり、過去の発言内容などはあまり重要ではないのです。

アサヒグループHD社長 小路明善氏

もちろん私にも、相手の発言や出された意見などをせっせとノートに書きとめていた時期があります。若いうちは上司や先輩に言われたことや、会議で重要だと感じた意見などを、きちんと書き残しておく習慣が必要です。私も49歳で執行役員に任じられ、責任を意識しだした頃から現在のやり方にスイッチしました。

能の言葉に「守破離」というものがあります。まずは上司や先輩のやっていることをそっくり真似る「守」、次はほかの方法も試してみる「破」、そして最終的には、それらにとらわれず、自分独自のやり方をつくりあげる「離」。この段階を踏んで、一人前の能役者になるということです。メモや書き方にかぎらず、守破離はビジネスにも通用する考え方だと思います。

お礼状を書くとき、相手に合わせてメールまたは手紙を出します。その際に気をつけているのは、相手の言葉や行動から「学んだこと、役立ったこと」を具体的に示して感謝するということです。メールなら、会食なりゴルフのラウンドなりの翌朝1番に、簡潔なお礼のメールを送ります。手紙なら、部下が用意してくれたお礼状の余白に、手書きで一言書き添えます。

たとえば先日一緒にゴルフをしたお得意様は、玄人はだしの腕前でした。私もその方のアドバイスに従ってみたところ、スコアがぐんとアップしたので、翌日すぐに「あのレッスンのおかげで開眼しました」とメールを送ったら、たいへん喜んでくださいました。