経産省が支援するアジアLNG普及の真意

2017年には日本に入ってくる在来型のLNGは1バレル=6.61ドル。これに対し米国のシェールガスは3.02ドルで、液化の費用や搬送費用を加えると1バレル=8ドル程度になる。これでは買い手がつかない。

しかも、LNGは各社が供給を増やしている。「2019年上期あたりからLNGは本格的な過当競争に突入することになる」(エネルギー業界関係者)。それでも電力会社やガス会社であれば、自分たちで使えばいい。

ところが東芝は、発電所でもガス会社でもない。割高なLNGとセットになった発電システムを買おうという企業はいない。LNGがだぶつき、売れなければ、そのまま損失になってしまう。

ここでも東芝が頼るのは経産省だ。10月18日の「LNG産消会議」で世耕弘成・経産相は、アジアでLNGの消費が低迷しているとして、普及に向けて官民合わせて総額100億ドル(1兆円超)の支援をすると発表した。さらにLNG船受け入れ基地や発電所の投資計画に日本企業と積極的に参画し、国際協力銀行(JBIC)の投融資や日本貿易保険(NEXI)の保険などで後押しするという。

全国紙記者はこう解説する。「経産省は原発再稼働をあきらめてはいない。しかし今後のエネルギー政策は不透明で、米国からの安定したLNGの供給を中断するわけにはいかない。東芝のダブつきは、アジアで消費しようという魂胆なのだろう」。

果たしてそんなにうまくいくだろうか。問題を解消したかにみえたが、東芝の前途はまだまだ多難だ。

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