絵本というツールだったからこそ、ここまで売れた
絵本のほか、「耳で聞ける」ロジャーもある。声優の水樹奈々さんや中村悠一さんとのコラボで、朗読のCDやオーディオブックでも販売しており、現在、累計7万部売れている。しかし矢島氏は、音声メディアの売り上げは想定より少なかったと話す。
「7万部なのでかなり売れてはいるんですが、絵本の売り上げと比べると少ない。企画段階では、音声の方が絵本より売れると思っていたんですよ。なぜなら、毎日子供に読み聞かせをするのは大変だけど、音声だったら流すだけ。パパとママにとってもより手軽な音声の方が需要があると予想していたんです。でも後になって、『逆に絵本という形だったからよかったのかもしれない』と思うようになりました」
CDを流すだけで子供が寝てくれればラクだろう。ところが親の心理としては、絵本を読む時間=子供と触れ合う大切な時間。だから、時間を作ってでも読み聞かせたいという思いがあるのだろう。矢島氏は、絵本というツールだったというのも、大ヒット商品になった大きな要因だったのではと分析する。
ベストセラーに必要なのは、作り手の思いの強さ
現在、世界中でベストセラーになっているロジャーだが、実は一番売れているのは日本だという。最後に、ロジャーがヒットした最大の要因は何かと矢島氏に聞いてみた。
「『今、こういうものがはやっているから作ろう』と本を作ることも多々ありますが、そういう時って、読者の気持ちを推測しながら作るんです。でもロジャーは、僕自身が子供の寝かしつけに困っていたので、『こんな本があったら便利だな』と読者に近い立場で作ることができた。やっぱり編集者自身が、心の底からこの本を世に出したいという思いが強ければ強いほど魂がのって、より良い作品にするための最後の一踏ん張りにつながるんだと思います」