なぜ東北楽天は球場での営業権を取得したか
最後に登場したのは、球団と地元地域との結びつきを重視する「地域密着モデル」である。広島や福岡ダイエーによる先行的な試みはあったものの、千葉ロッテ、北海道日本ハム、福岡ソフトバンク、東北楽天などによって、「地域密着モデル」が本格的に展開されるようになったのは、00年代にはいってからのことである。
このモデルの特徴は、プロ野球の球団を、広告宣伝機能を担う「コストセンター」から、ビジネス事業体として収益をあげ、自立した経営を実現する「プロフィットセンター」へ、変身させたことに求めることができる。このような変化を生んだ背景には、54年の国税庁長官通達によって制度的裏づけを得ていた球団の赤字を親会社の広告宣伝費として損金処理する方式が、00年からの連結決算中心主義会計への移行によって、継続しがたくなったという事情が存在した。
ここまで見てきたように、日本のプロ野球は、「本業シナジーモデル」によって始まり、その後「広告宣伝モデル」にもとづいて発展したのち、最近は「地域密着モデル」に向かいつつある。このような歴史的背景・文脈をふまえるならば、プロ野球再生の道は、どのようなものになるであろうか。
プロ野球の危機克服のポイントが試合それ自体を盛り上げ、ペナントレースを白熱化させることにあることは、すでに述べたとおりである。そのためには、まず、「地域密着モデル」を深化させることが重要である。「地域密着モデル」は、観客動員の増加→球団収入の増大→補強や施設への投資の拡大→チーム力の向上→観客動員の増加、という好循環のメカニズムをもたらす可能性をもつ。
福岡ダイエー、千葉ロッテ、北海道日本ハムなどは、このメカニズムを働かせて、リーグ優勝および日本シリーズ制覇を勝ち取った。「地域密着モデル」の好循環のメカニズムがうまく作用し、それが球界全体に広がれば、各球団間には、戦力向上をめざす活発な競争が生じる。そうなれば、個々の試合が盛り上がるとともに、ペナントレース全体が白熱化することにつながるわけである。