「孫の声を聞く楽しみを奪うのか」

家計にはその家庭の事情が色濃く反映される。「家計相談は、人生相談でもある」と言う八ツ井氏が、怒りっぽい人の特徴として指摘するのが「聞く耳を持たない」こと。

「例えば、月2万円を浮かすことができれば、40年で1000万円近くも節約できます。逆に言うと、月2万円の浪費を放っておくと、家計はボディブローが効いたようにゆっくりと弱っていくことになります。相談者には、まずご自身の家計を客観的に見てもらい、少額でも改善できるところを一緒に探っていくのですが、怒りっぽい人ほど現実や他人のアドバイスを受け入れない傾向があるんです」

「かつて自営業で羽振りのいい暮らしをしていた50代の男性が、リーマンショック後の不況で職も貯蓄も失ってしまい、相談に来たことがありました。収入のない今も生活水準が下げられずにいるようで、家計簿には明らかに使いすぎだという費目がたくさんありました」

そこで、通信費の節約を提案したところ、「孫の声を聞く楽しみを奪うのか」と声を荒らげ、食費の高さを指摘すると「この年になってマズいものは食べたくない」と拒み、結局、保険の内容を見直す程度しか手を打てなかったという。

「散財に悩んでいる人は、家計に問題があることを心のどこかで理解しているようですが、この方のように、それを認めるのが怖くて、現実逃避している場合があります。お金の使い方を見直すというのは、単純に行動を変えるということではなく、考え方や価値観を変えることでもあります。痛みが伴うのは当然なのです」

そのイライラが、気づかないうちにお金を遠ざけていることもある。なぜか貯まらないという人は、自分の内面と向き合ってみてはどうだろうか。

八ツ井慶子
大手信用金庫を経て、2001年FP活動開始。13年独立。城西大学非常勤講師。著書に『レシート○×チェックでズボラなあなたのお金が貯まり出す』(小社刊)。
 
(撮影(八ツ井慶子氏)=吉澤健太)
関連記事
「贅沢してない」食費バカ高世帯の常套句
なぜ"怒りっぽい人"は嫌われ、孤立するか
スタバ「マイボトル」の人は浪費家だった
楽天的な妻の浪費癖で老後資金ゼロ
ビンボーでも幸せな人は、なぜ幸せなのか