読売は冷静に安倍演説を支持

9月22日付の読売社説の見出しは、「対『北』圧力で各国と連帯せよ」である。

「北朝鮮に核ミサイル開発を断念させるには、国際社会の連帯が欠かせない。日本は、その努力を倍加させるべきだ」と書き出し、「約16分間の演説時間の8割超を北朝鮮問題に費やしたのは、情勢の緊迫化への危機感からにほかなるまい」と指摘する。

その後で「国際社会の再三の警告を無視し続ける北朝鮮に政策転換を促すため、今は圧力を強化する時だ」と訴え、安倍演説を擁護する。

産経社説に比べて割と冷静だが、安倍支持のスタンスはこれまでと変わらない。読売社説はさらに産経社説と同じように「対話」を否定する主張を展開する。

「『対話は、北朝鮮にとって我々を欺き、時間を稼ぐ手段だった』との首相の主張はうなずける。こうした事実が、世界全体の共通認識になっているとは言い難い。首相の指摘は適切だった」

こう書かれると、読売という新聞がいかに安倍政権を擁護しているかがよく分かるだろう。

安倍演説は日本を攻撃する「口実」になる

最後に9月23日付の毎日新聞に掲載された作家、柳田邦男氏のコラム「深呼吸」を取り上げたい。

柳田氏は「特に安倍政権のひどさは目に余る。安倍晋三首相自身をはじめ、閣僚や官僚の国会などでの発言が『記憶にない』『記録はない』『法規にのっとって処理している』などなど、まるで壊れたレコードを延々と再生しているかのような空疎な単文で終始していることについては、この欄で何度も書いてきた通りだ。情けないことに、この国の政治家にも官僚にも、国民のための奉仕者たらんとする資質が欠落しているとしか思えない」と安倍政権の根源的な問題に言及した後、今回の安倍演説を次のように問題視する。

「この発言は『日本を米国と同列の攻撃目標にしなければならない』という口実を、改めて北朝鮮に与えたことになる。仮に米国が北朝鮮の基地を攻撃すれば、北朝鮮は核弾頭を搭載したミサイルを日本に撃ち込んでくるかもしれない。1発でもミサイルが撃ち込まれれば、その被害は計り知れないものとなるだろう。それでも安倍首相は『米国とともに』という軽率な発言を繰り返すのか」

安倍首相にはしたたかさが足りない

柳田氏もこの沙鴎一歩と同じく、国連での安倍首相の演説を軽はずみだととらえている。柳田氏が指摘するように、もし日本に核ミサイルが1発でも落ちれば、甚大な被害が出ることは間違いない。かつて広島や長崎が原爆で破壊されたように、いやそれ以上の被害を受けるだろう。

北朝鮮にそうさせないためにはどうすべきなのか。安倍首相がトランプ氏との距離をうまく政治的に調整する必要がある。韓国が21日、北朝鮮への800万ドル相当の人道支援を実施すると発表したのは、米国との距離を調整しようとするひとつの試みだとも受け取れる。

安倍首相に足りないのは、こうしたしたたかさではないだろうか。

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