富裕層に適切な課税をすれば、庶民への増税は必要ない

NGO(非政府組織)のオックスファムは2017年1月16日、世界の富豪トップ8人が抱える資産額が、下位50%(36億人)の資産合計とほぼ同じだとする報告書を発表しました。報告書はトップ8の具体的な名前は明かしていませんが、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス、投資家のウォーレン・バフェット、フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグなどが含まれているとみられ、大富豪8人の大部分がアメリカ人であるとみられています。

それだけ大きな格差が存在すれば、アメリカの庶民が怒るのも当然です。一方、日本には、アメリカのような大富豪は存在しません。だから、日本はアメリカと比べれば、ずっと平等だということになっています。しかし、それは本当でしょうか。

2014年の「全国消費実態調査」は、国民が保有する資産を調査しています。この調査では、消費者自らが資産額を回答しているのですが、結果は、単身世帯の平均資産額が2652万円、2人以上世帯が3491万円となっています。不動産を含む資産額だから、こんなものでしょう。そして、ここに国勢調査の世帯数を乗ずると、国民全体の資産額は、1707兆円ということになります。

一方、内閣府が発表している「国民経済計算」によると、家計が保有する資産は2727兆円です。つまり、国全体で家計が持っている資産と、国民が申告している資産の間には、1000兆円もの差があることになります。

細かな統計上の差はあるものの、基本的な要因は、国民が資産額の過少申告をしているか、調査そのものを拒否しているということでしょう。そして、その犯人と思われるのは、どちらも富裕層です。日本の富裕層は、目立たないように息をひそめています。目立ってよいことは、何もないからです。そして、こっそりと1000兆円以上の資産を抱え込んでいるのではないでしょうか。

アメリカの経済誌「フォーブス」の2016年米長者番付トップ10をみると、上位8人が保有する資産は、日本円で約50兆円です。いかに1000兆円が大きいか分かるでしょう。国際決済銀行の統計によると、すでに日本が英米を抜いて世界最大のタックスヘイブン利用国になっています。都心の数億円の新築マンションが、即日完売になるのも、日本に富裕層がたくさんいる何よりの証拠でしょう。

だから、政府がまずやらなければならないのは、日本の富裕層の実態を明らかにすることではないでしょうか。彼らに適正な課税をすれば、庶民の増税など、まったく必要がなくなるはずです。