国会議員の資産も不透明なカラクリはどこにあるのか

2016年7月の参院選で当選した議員121人の「資産等報告書」が公開されています。1人あたりの平均資産額は2990万円で、4年前の前回選挙のときよりも780万円少なくなりました。

『森卓77言 ―超格差社会を生き抜くための経済の見方』森永卓郎著 プレジデント社

ただ、この数字を知って、「そんなに少ないの」と思った方が、多いのではないでしょうか。国会議員はお金持ちというイメージがあるからです。

実は、資産額が少ないのには、カラクリがあります。今回の資産公開は、国会議員資産公開法に基づいて行われているのですが、法律上、資産公開に含めなくてよい資産がいくつもあります。

一つは、株式です。働いた報酬で大金持ちになる人はほとんどいません。大部分の大金持ちは、創業した会社とか、親から受け継いだ株式が値上がりすることで、お金を増やしているのです。

国債などの債券は資産公開の対象になっていますから、なぜ株式だけを隠すのか、理屈が通りません。

もう一つは、普通預金です。定期預金は公開対象ですが、普通預金だと公開しなくてよいのです。いまの超低金利の状況では、定期預金にも、ほとんど利息が付かないので、預金を隠したかったら、定期預金を解約すれば済むのです。国会議員は国民の代表ですから、保有資産を公開する義務があると思います。それなのに、なぜ抜け穴の大きな法律を作ったのでしょうか。

私には、法律を作った国会議員が、他人に言えない資産を持っていたからとしか、思えません。

森永卓郎(もりなが・たくろう)経済アナリスト、獨協大学経済学部教授
1957年生まれ。東京大学経済学部経済学科卒業。専門は労働経済学と計量経済学。著書に『年収300万円時代を生き抜く経済学』『グリコのおもちゃ図鑑』『雇用破壊 三本の毒矢は放たれた』『消費税は下げられる! 借金1000兆円の大嘘を暴く』などがある。
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