自衛隊や日本のインフラへのテロも

「前回」の朝鮮戦争時(1950年~)の経験を顧みれば、北朝鮮の失敗は、国連軍の釜山橋頭堡をあと一歩でつぶせなかったこと、加えて北朝鮮軍の背後の補給線を断った仁川(インチョン)上陸作戦を国連軍に許してしまったことだ。

北朝鮮の現在の兵器開発は、そうした負の経験をフィードバックしたものであり、アメリカ軍を始めとした国連軍がそれに対して有効な手だてを取れるかは、決して楽観できない。イラクやシリアを見れば分かるように、空爆だけでは戦争の終結には至らず、かといって対艦ミサイルの脅威によって艦艇部隊の沿岸への接近が困難な状態では、国連軍側の兵力への効率的な後方支援も難しくなるからだ。補給線の破壊の一環として、自衛隊やわが国の公共インフラに大規模なテロ攻撃が行われる可能性も非常に高い。

このまま経済制裁の度合いを深めていった場合、資金難に陥った北朝鮮が、「核の横流し」という最悪の行為に走る可能性もある。ここまで北朝鮮の核戦力が成長してしまった以上、対抗する側が先手を取って、弾道ミサイルの発射機すべてを一瞬にして葬る作戦を取れなければ勝機はない。「斬首作戦」などと、世迷いごとを言っている場合ではなくなってきたのだ。

芦川 淳(あしかわ・じゅん)
1967年生まれ。拓殖大学卒。雑誌編集者を経て、1995年より自衛隊を専門に追う防衛ジャーナリストとして活動。旧防衛庁のPR誌セキュリタリアンの専属ライターを務めたほか、多くの軍事誌や一般誌に記事を執筆。自衛隊をテーマにしたムック本制作にも携わる。部隊訓練など現場に密着した取材スタイルを好み、北は稚内から南は石垣島まで、これまでに訪れた自衛隊施設は200カ所を突破、海外の訓練にも足を伸ばす。著書に『自衛隊と戦争 変わる日本の防衛組織』(宝島社新書)『陸上自衛隊員になる本』(講談社)など。
(写真=EPA=時事)
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