さて、「日本ファーストの会」が政党ではなく単なる若狭議員の政治団体であるという制度的な解説はこの程度にして、「日本ファーストの会」の中身について考えてみよう。

公式サイトに「輝照塾」とある理由

若狭議員は、「日本ファーストの会」について、政治塾「輝照塾」の開催・運営を行うことを主な目的として設立した、と説明している。確かに、公式サイトには、「日本ファーストの会」の下に大きく「輝照塾」と記載されており、「日本ファーストの会」の設立の主たる目的が政治塾の開催・運営であることがわかる。

「日本ファーストの会 輝照塾」のウェブサイト(https://nipponfirst.jp/)より。

ちなみに、政治塾の「輝照塾」という名称は、若狭議員の説明によれば、「一燈照隅 万燈照国」という最澄の言葉を参考に決めたとのことである。だが、国立国会図書館が運営する「レファレンス協同データベース」のレファレンス事例によると、これは最澄の言葉ではなく、最澄の『山家学生式』の中に出てくる「照于一隅 此則国宝」という言葉に影響を受けた、安岡正篤氏によって作られた言葉のようだ。

その輝照塾、規約の前文では、都知事選での小池知事の勝利や、先の都議選での都民ファーストの会の圧勝の背景を、「情報公開や説明責任の軽視に繋がるいわゆる『しがらみ政治』という古き政治手法が依然として残存する中で、山積する政治・経済・社会上の問題点に対して有効な解決策が示されないまま急速な少子高齢化が進展している現状等を打破し、情報公開を力強く進めながら速やかに抜本的大改革を実現していくべき旨の、多数の有権者の切実な願いの顕れである」とし、「国政において、こうした有権者の切実な願いに対して応え、日本の政治・経済・社会上の問題点につき抜本的大改革を立案・断行する有為な人材を育成・輩出し、もって、我が国の輝ける未来を照らし出すことを目指し、ここに『輝照塾』を創設する」と政治塾の設立の趣旨を規定している。

規約では「候補者の擁立」とは一線を引く

要するに、既存の政党ではない、既存の政党には期待できない有権者の新たな受け皿を担う人材を集め、育成しようということである。その旨は、同規約第2条第1項にも「本塾は、若狭勝を塾長とする政治塾であって、日本の政治・経済・社会の抜本的な改革に向けて有為の人材を育成・輩出することを目的とする」と規定されている。

その先には当然、国政があるわけであるが、一方で、同規約の第2条第2項には、「本塾は、日本の政治・経済・社会上の問題点につき有効な政策立案・実現をなし得る人材を育成することに主眼を置いた組織であり、特定選挙において『日本ファーストの会』又は『若狭勝』又は『小池百合子』による公認・推薦・支持・支援を塾生又は卒塾生に対して約する組織ではない。また、本塾は特定選挙において公認・推薦・支持・支援を行わない」と規定し、政治塾という性格を明確にするとともに、将来的に想定される国政政党の設立や国政選挙への候補者の擁立とは一線を引いている。