中古車の6割をパキスタン人が買う
【田原】そこで聞きたい。買い取りから輸出事業に、なぜ転換したの?
【山川】買い取り事業では、買い取った中古車をオークションに出して業者に売ります。じつはオークション会場は外国人だらけで、なかでもパキスタンの人が6割を占めるくらいに多かった。彼らは相場より高く中古車を競り落として、海外にいる同胞の中古車販売業者に輸出をしていました。相場より高く買ってくれるから助かるのですが、高く買っても利益が出るのだから中古車輸出はおいしいビジネスです。それをパキスタンの方たちに持っていかれて、悔しい気持ちがありました。
【田原】日本人は少ないんですね。
【山川】昔は中古車輸出にダーティーなイメージがあったからでしょうね。外国人の業者はフレームの中に麻薬を入れているとか、盗難車を輸出しているという噂もありました。実際に私たちが市場に入ってみると、違法なことは行われていなくて、まったくクリーンなビジネスでした。
【田原】最初はどこに輸出した?
【山川】ミャンマーですね。もっとも、これは騙されて2500万円損しましたが……。
【田原】どういうこと?
【山川】ミャンマーは市場が開放されていなかったので、隣国のタイに住むミャンマー人をパートナーにして輸出をはじめました。先に車を送って、売れたら代金を日本に送ってもらう約束でしたが、代金が支払われたのは最初だけ。最近売れないなと思って連絡してみたら、相手は雲隠れしたあとでした。なんとか探し出して裁判したものの、こちら側のタイ人の弁護士が買収されて負けてしまいました。
【田原】それは大変でしたね。
【山川】じつは次のニュージーランドでも痛い目に遭いました。今度のパートナーは現地在住の日本人。彼は現地の業者になめられていて、請われるままに車を勝手に貸していた。現地ディーラーは店頭に多くの商品を並べたくて「貸せ」というのですが、このやり方はリスクが高い。案の定、ディーラーが一社潰れて車を回収できなくなり、2億5000万円の損害が出ました。彼に騙すつもりはなかったと思いますが、こちらへの支払いが滞ったときにウソを重ねて事実を隠したせいで損害が広がった。裏切られた思いです。
【田原】そんなに騙されて、輸出をよく諦めなかったですね。
【山川】その先に絶対何かあると確信していましたから。ただ、次はやり方を変えて、先にお金をもらってから輸出することにしました。商品も、自分の得意なスポーツカーに限定。競合のパキスタン人はスポーツカーを苦手としているので、これなら勝てるだろうと。輸出先はカナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド。これがうまくいって、中古車輸出が軌道に乗りました。