自分の「原理原則」をノートで磨き上げろ

『経営者になるためのノート』がノートである所以は、まさにここにあります。このノートで最も重要なのは、本文の周囲にある罫線の引かれた余白部分です。本文を読みながら、そこにある原理原則を、自分の仕事という文脈に落とし込み、自分の仕事と紐づける。そうすることで、自分なりの「DO's&DONT's(やるべきこと、やるべきではないこと)」が磨かれ、原理原則が培われます。

先ほどの「指示をして仕事が終わりではない」というエピソードも、受動的に読んだだけでは「いい話だな」で終わりです。しかし、「指示をして仕事が終わりではないということは、自分の仕事でいえば一体どういうことだろうか」と、自分の頭を使って能動的に考えることができれば経営者としてのセンスを磨くことができます。スキルは教科書で学ぶことができますが、センスはノートでなければ磨けないのです。

この事情は、絵画の世界を考えてみるとよく理解できるでしょう。絵筆の使い方、遠近法、色彩に関する知識といったスキルは、教科書から学べます。しかし、そうしたスキルの習得をいくら重ねても、名画を描けるようにはならない。画家になるためには、たくさんの名画を鑑賞しながら、デッサンや写生を繰り返し、アーティストとしてのセンスを磨いていく必要があります。『経営者になるためのノート』の本文には、いわば「いい絵とは何か」が書かれています。しかし、それを読むだけでは名画を描けるようにはならない。名画を参照しながら、周囲の余白に、自分なりのデッサンや写生を重ねていく。そうすることでしか、絵は上手くならないのです。

このノートは、経営センスを磨くための最高のレイアウトを採用していると私は思います。原理原則に対するコメントの書き込みが、非常にやりやすい。逆に言えば、真ん中の本文だけ読んだところで、このノートの価値の10%も享受することはできないでしょう。

1冊使ったら、もう1冊買う。これを一定期間繰り返してから、ノートを読み返してみれば、自分自身の「経営者になるため」の成長の軌跡を、客観的に確認できるはずです。

経営者人材がいなければ社会は回りません。実際に経営者となる人は少数ですが、多くの人が担当者を目指す社会より、経営者を目指す社会のほうが活力がある。このノートでぜひセンスを磨いてください。

(構成=山田清機 撮影=門間新弥)
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