「オレたちに合わせろ」が米国流
複数の米国企業で仕事をした経験でいうと、米国人の基本思想は「アメリカンファースト」(米国第一)です。ナイキ時代には、あれだけ世界各国にスポーツシューズを展開しているのに、アジア人向けのソール(足型)がないという、驚きの現実にも直面しました。
もともと、アングロサクソンの足の特徴は幅が狭くて甲が低い「幅狭甲低」ですが、アジア人は逆で「幅広甲高」です。僕は昔から愛用していたナイキの靴が、他メーカーの靴よりもサイズが大きくないと履きにくかった理由が初めて理解できました。「カッコいいと思っているのなら、足をオレたちが用意した型に合わせて履け」という思想なのです。でもナイキは、中国経済が成長するに従い、アジア人向けソールも用意するようになりました。
実は米国企業が日本で失敗する理由の1つは「米国型にはめ込もう」とすることです。逆に基本は押さえつつ、ある程度はローカルに委ねるとうまく行くケースも多い。日本マクドナルドが、秋の月見シーズンに出す「月見バーガー」が25年も人気なのはその一例です。
本を読んで、映画を観ても、レイ・クロックに対する意識は変わりませんでした。どちらもハンバーガーとポテトを片手に、コーラを飲みながら楽しめる内容です。
1958年愛媛県生まれ、東京育ち。一橋大学商学部卒業後、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。約10年後にセガに転職。以後ベンチャーキャピタル、ナイキ、日本マクドナルドCOO(最高執行責任者)、セガに戻って社長、グルーポン東アジア統括副社長を経て、2013年7月にコメダ社長に就任。米国文化を愛し、映画通の一面もある。