販社頼りではない「新しい店頭」

小林さんが研究開発部門と並んで「いちばんよく話す」というのがトレードマーケティングの部署だ。小売業の業態やカテゴリーで担当が分かれている。花王のブランド戦略と、実際に小売りと交渉する現場担当者が上げてくるチェーン戦略を調整、融合させるのが主な仕事だ。

トレードマーケティング部の高山博史さんは、花王カスタマーマーケティングに02年に入社。現在は大手ドラッグストア数社を担当している。

デオドラントZについて事業ユニットから聞いたのは1年以上前のことだった。通常は「新製品について話すのは7~8カ月前」だけに、異例の早いタイミングからの準備開始だった。

渡辺直美さんのインパクト

「すでに自社でもニベアのエイト・フォーというブランドがあります。小売業様に提案するときに、単にビオレのデオドラントZの売り上げやシェアが伸びても、エイト・フォーが落ちてしまってはご迷惑がかかる。花王トータルとして、どう貢献できるか、いかに小売業の戦略と融合できるかがいちばん難しかったですね。どんな提案なら受け入れていただけるのか。すり合わせていきました。実際に現場で交渉をするのは現場の営業担当になるので」

(左)花王グループカスタマーマーケティングチェーンストア部門トレードマーケティング部 高山博史氏(右)同部門チェーンドラッグ部 藤原卓也氏

実際に小売業との窓口となるアカウント担当の藤原卓也さんは04年、花王カスタマーマーケティング入社。現在は、記事冒頭に紹介したウエルシアを担当している。デオドラントZの話を聞いたのは、去年の7月頃だという。

「ニオイや汗ジミ防止という機能を軸にした売り場の提案をしました。あと今回はやはり、CMで渡辺直美さんを起用したインパクトも大きかった。バイヤーさんがそれを観て『花王っぽくないね』と手を叩いて笑ってくれた。あとは店頭でどう伝えていくかだなと。訴求のポップが欲しいなどの提案はトレードマーケティング部と事業ユニットがほとんど対応してくれましたね」