じつはアメリカの甘えの時代は10年間だけでなく、20年間近く続いていたという解釈もできる。ソ連邦の崩壊と日本のバブルの崩壊が起きた91年から数えれば20年近く、アメリカ一国覇権と市場原理主義的グローバリズムの時代が続いてきたのである。
しかし、その途中で、じつは大きな警報が一度は鳴っている。01年である。この年、ITバブルが崩壊し、そして世界貿易センタービルへのイスラム原理主義者によるテロも起きたのである。私は当時のプレジデント誌のコラムで、「このビルの崩壊がベルリンの壁の崩壊に重なって見えた」と書いた。一つの時代の終わりを感じたからである。そして、その頃書いた別な書物で、「01年9月11日は、人間社会の悲鳴あるいはその警告と受け止めるべきかも知れない。それは、決してアメリカ一国への警告ではなく、市場経済諸国全体に対する警告かも知れない」とも書いた。
しかし、世界は、アメリカは、この警告にきちんと対応しなかったようだ。それどころか、アメリカはイラク戦争にすら乗り出した。つまり、警報が鳴った後でさらに10年近くを同じ「甘え」の中で過ごしたかに見える。
甘えの20年の後にくる、失われた10年。
すでに9.4%にまで急上昇したアメリカの失業率も、いくらなんでも大恐慌当時の25%にまではならないだろうし、GDPが4割も縮むこともないだろう。しかし、アメリカにとって長い低迷の時代にならざるをえないのではないか。