「教えても子どもは英語をすぐ忘れてしまう」
バイリンガルの親が幼児英語教育を焦らない理由
【1】どうせ成長過程で英語を忘れてしまうから
意思の疎通ができる範囲を超えて、発音や語彙力も英語ネイティブと同様の“完璧なバイリンガル”になることは非常に難しい。なぜなら赤ちゃんの脳は発達段階で、より使用頻度が高い言語のネットワークを強化し、そうでないネットワークをシャットアウトするようになるからだ。
アメリカのワシントン大学のパトリシア・クール教授の研究によれば、生後6カ月から8カ月頃までの赤ちゃんは、親の国籍によらず育った国の言葉を聞き分けられる。しかし、生後10カ月から12カ月頃を境に、母語以外の音を聞き取る能力が落ちていくのだ。これはひとつの言語をより効率良く学ぼうとする、発達の過程における脳の正常な働きだ。(注2)
「経済的余裕がなければ早期教育はしない」
それに逆行して子どもを日英バイリンガルに育てるには、日本語に匹敵するぐらいの量の英語を聞いたり喋ったりする環境に身を置く必要がある。一番良いのは家庭内と外の保育施設や学校で、使用言語を変えること。実際に成長の過程で自然にバイリンガルになった人の多くは、そういった環境で育っている。
しかし日本で育つ子どもに対し、日本語と同じぐらいの分量の英語を使う環境を作ることは、非常に難しい(国際結婚をした家庭など、例外はあるが)。筆者が聞いたところでは「プリスクールから高校まで、インターナショナルスクールに一貫して通わせる経済的余裕がない場合は、早期の教育はしない」(通訳者・ライター)と判断する親もいた。
バイリンガルの親たちは、自分がふたつの言語を習得した環境が、日本では再現困難なことを知っているのだ。