7人が実現した農業のビジネス化のポイント

各法人は、突然、現在の企業経営になったわけではありません。家族経営から始まり、外部人材を雇ったことにより法人経営へ移行し、株式会社化による企業経営へと徐々に発展してきました(図2)。この進化は、内的要因である社長の実現したいビジョンと外的要因である天候不順や価格の下落などを踏まえ、試行錯誤しながら取り組んできた過程で生まれたものでした。

ビジョンを実現するためのビジネスモデル・成長戦略を描き、個々のバリューチェーンを生産・販売・物流・設備を中心に構築していきました。加えて、次なる発展の打ち手として農商工連携のようなパートナーシップや、海外マーケットを獲得するためにグローバル化に取り組む流れが見えてきました。

また、販売や生産の基本活動を行うためには、人・組織・モノ(IT含む)・カネ(資金調達、KPI)のような企業としての土台の構築も必要となります。法人化の初期段階では人・組織と資金調達が重要なテーマとなり、企業体として発展していく中で法人格も変遷し、ITを活用したコスト削減やGAP(農業生産工程管理)などのレギュレーションに対応することでの付加価値化の取り組みが生まれてきました。

7社のバリューチェーンは、1次産業領域で大規模×高付加価値で差別化しているタイプ(1)(サラダボウル、鈴生)と、2~3次産業領域で付加価値を創出しているタイプ(2)(舞台ファーム、六星など)に分類されます(図3)。

1次産業領域で差別化しているタイプ(1)の2社に共通しているのは、大規模に生産し、コスト優位性を出しながら、糖度の高いトマト(サラダボウル)や品薄な時期に出す冬レタス(鈴生)で差別化して、収益をあげている点です。高く売れるものをスケールメリットを生かしながらつくるビジネスモデルです。

一方、タイプ(2)の2~3次産業領域で付加価値を創出している企業にとっては「品目が加工に適していること」かつ「加工品に市場性があること」の2つが重要な成功要因となっています。

各経営者はこういったバリューチェーンを構築する過程で直面した多くの困難を、卓越したビジョンとリーダーシップで克服しつつ、現在のビジネスを確立したことが対談の中でもにじみ出ていました。まさに各社の経営者のリーダーシップが成長の推進力であったと言えます。