バイオディーゼルを作るために起業

2014年、大阪市住之江区に実用レベルの5号機を建設した住之江工場。

吉野は、創業前、三井物産で化学産業分野の営業を担当していた。32歳の時に思い立って独立し、米カリフォルニア大学バークレー校にMBA取得のために留学した。そこで、シリコンバレーのベンチャー経営者たちに刺激を受け、自らも起業家になりたいと思った。

「当時はエネルギーと環境問題に興味があり、新しい技術をビジネスベースで世の中に広めたいと思っていました」と吉野は語る。

2006年に帰国後、廃油からバイオディーゼルを作る会社を立ち上げようと、その技術を開発するため知人の紹介で大阪大学の研究グループと接触、その中に塚原がいた。

「当時はマイクロ波の研究を始めて1年ほど経ち、JST(科学技術振興機構)の大学発ベンチャーのプログラムを使って、事業化をしようと思っていました。しかし、最初に吉野と話したときは、あまりマッチせず、ペンディングになりました」と、塚原は語る。

吉野はマイクロ波よりもっと別のやり方でバイオディーゼルを作りたいと思っていたが、その後、2回目の出会いで意気投合した。

「塚原ほど本気で世の中に役に立つ新しいものを作りたいと考えている研究者は他にいないことがわかったのです」と、吉野。こうして、強力なタッグチームが生まれた。

塚原は周囲からだいぶ反対されたが、事業化するにはベンチャーを立ち上げるしかないと、2007年8月、吉野と塚原で出資金600万円を持ち寄り、吉野の自宅マンションを本社としてマイクロ波環境化学(のちにマイクロ波化学に社名変更)を設立した。

塚原は助成制度を調べて、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から助成金を得たが、「マンションの一室で研究などできない。新たに研究室を開設しなければ助成金は出せない」とNEDO側から言われ、慌てて大阪大学の産学連携の制度を活用し、学内の研究室を確保することができた。