「サブリース契約」のトラブルも増加

賃貸経営によって相続税の低減が見込めることは間違いない。しかし、ローンを組んで建物を建築した場合、毎月の返済に見合うだけの家賃収入を得ることが前提になる。その中で問題となるのが「空室率」であるが、全国区で見た場合、空室率は1998年の19.3%から2013年には23.2%と増加傾向にあり、アパート経営に対するリスクは決して低くない(総務省統計局、住宅・土地統計調査)。

このような中で貸家経営を行っていこうとする場合、住宅建築メーカーや不動産会社などが提供する「サブリース契約」は魅力的に見える。サブリースとは、オーナーから対象物件を事業会社が一括借り上げして運営管理を引き受け、それを入居者へ転貸し、賃料収入の一定割合を保証賃料としてオーナーに支払う賃貸システムである。とくに住宅建築メーカーによるものは、新規の貸家建築とサブリースを組み合わせたプランが多い。

サブリースは、オーナーにとっては次のようなメリットがある。

・空室があってもその分の収入も保証され、空室のリスクを回避できる
・アパートを新たに建築する場合、サブリースによって収入のめどが立つため、ローンが通りやすい
・募集から契約、入居後の管理まで事業会社が行うので、入居者と直接関わる必要がない
・万が一入居者との間に訴訟が起きても、事業会社が引き受けるため、手間がない

サブリースを節税対策としてみたとき、賃借人が事業会社となるため、たとえ実際の入居割合が50%であったとしても、賃貸割合を100%として計上できる。一般に賃貸物件は築年数が経過すると価値が低下し、空室が増える。そこで例えば、10年後の相続と空室リスクを見越して、サブリース契約を結んでおくという方法もある。

こうしたさまざまなメリットから、近年、サブリース戸数はやや増加傾向にある。

しかし、サブリースにまつわるトラブルも少なくない。不動産サブリース被害者の救済を行っている「サブリース被害対策弁護団」(TEL:078-371-0171、https://sublease-bengodan.jimdo.com/)によれば、「『30年一括借り上げで、一定した賃料を受領できる』というから契約したのに、10年経過後に賃料の減額を求められた」「当初説明されていない修繕費や負担金の出費を求められ、これを断ったところ、中途解約された」といった相談が、週に1回は寄せられるという。「被害者の多くは高齢者であり、好材料を並べ立て、契約に持ち込むケースが多い」(同弁護団弁護士・増田祐一氏)。