物語を一緒に掘り起こし、共有する
また、遺品整理では、手紙や写真、小物類など、処分してよいかどうか迷う物がたくさん出てきます。物には大事にしていた人の思いや、その物にまつわる物語が詰まっています。
親が大切にしていた物なら、手元に残しておきたいと思うのが子の心情。しかし、親が亡くなった後では、その思いや物語も失われてしまいます。それはとても惜しまれること。金銭的な価値では測れない、親から受け継ぐべき財産といえるのではないでしょうか。
ですから、親がまだ元気で、自立生活ができているうちに、少しずつでも身の回りを整理していくことをお勧めします。もちろん、冒頭で触れたように、必ず抵抗に遭います。そこをどう乗り越えるかは、別の項で述べることにしましょう。
言うことを聞いてくれない親に腹を立てることなく、がまん強く進めていけば、少しずつ子の思いを理解してくれるようになります。片づけを拒絶していた当初から180度態度が変わるケースもよくあります。
ただ、ひとつだけ心にとどめておいてください。実家の片づけを、単純な不用品の処分だとは思わないでください。取りかかってみると、すぐにわかると思います。実家の片づけは、一見不用品の山と思われる物の中から、親が大切にしてきた物と、それが携えてきた物語を一緒に掘り起こし、共有する作業なのです。