遺品整理の現場では、遺族の欲望が顕著に表れる。遺品整理・特殊清掃業者の上東丙唆祥氏は、「業者が入る前に、われ先にと故人宅へ乗り込んで金目の物を探し、部屋を荒らしまわる遺族がいる。遺品整理の仕事では、そうして荒らされた部屋の後片付けをすることもある」という。ノンフィクション作家の菅野久美子氏が聞いた――。
故人の家を荒らしたのは泥棒ではなかった
テレビ番組などで度々取り上げられる遺品整理業。思い出の品やアルバムなどを発見し、遺族が涙を呼ぶ構成になっていることが多いが、現実はどうなのか。
神奈川県を拠点に遺品整理・特殊清掃業を手掛けるe品整理の代表、上東丙唆祥氏は、実際の遺品整理は、金や土地を巡って人の欲望がむき出しになる現場なのだと証言する。
遺された遺族にとって、故人が残した通帳や印鑑、現金、貴金属類などは、相続のために重要なものだ。
しかし、そんなカネを巡って、親族同士が水面下で骨肉の争いをしていることがよくある。
それは遺品整理の現場に顕著に表れる。
そういう家は、故人が亡くなったが最後、部屋がハチャメチャに荒れ果て、泥棒が入ったかのような惨状になっているのだ。
遺品整理の現場でよく目にするのが、この親族たちによる金品捜索、いわば「ガサリ」だ。
「僕たちは、それを『ガサリ』と呼んでいるの。亡くなった人の部屋に入ると、タンスの引き出しがどの段も開けっぱなしになって部屋が荒れている。金目の物が入っていそうなタンスがガンガン引き出されているの。宝島に誰が一番早くたどり着くか、われ先にと競い合うんです。彼らが狙うのはやはり金目のもの。ダイヤとか貴金属とか、現金ですね。下着の入ったタンスとか、明らかに開けなくていいところは開いていないですから。僕たちは、現場の散らかり方を見て、すぐにこれ、やってるなと思うわけ。この家、ガサったなと。こういうおうち、実は結構あるんですよ」