インフラ整備を他人任せでいいのか
ユーザーサービスがないわけではない。新型プリウスPHVを購入した顧客は月会費なしで急速充電器を1分あたり税込み16.2円、すなわち20分324円で使える。月会費1080円を支払えば普通充電器を無料で使える、というものだ。
が、これはいくら何でも真剣味に欠ける。80%充電の場合、EV航続距離は市街地で40km程度と推定される。この距離はレギュラーガソリンで走っても2リットル使うかどうかというレベルである。それを324円という代金と20分という時間をかけてわざわざ充電するのは非現実的だ。しかし、だからといって、単に急速充電料金をトヨタが肩代わりするというのは、EVとの急速充電器の争奪戦を誘発する可能性が高く、うまい手とは言えない。
トヨタディーラーに急速充電器を大量に置き、トヨタのPHEV、EVユーザーには定額制ないし低廉な料金で使わせ、他社モデルのユーザーには高い料金を設定するといった策でも打たないかぎり、プリウスPHVは性能が大幅に上がろうと、自宅周辺はEV、ロングドライブはハイブリッドという旧型と同じ使用パターンに縛られる。
そのあたりの先行投資は全国のディーラーに急速充電器を置いて料金定額制でサービスを提供している日産、また日産に比べると基数は少ないが、同じく全国の販売拠点に充電器を設置し、1分5円でサービスを提供している三菱自動車のほうがずっと積極的というものだ。EVへの橋渡しとしてPHEVを普及させることが使命だと本気でトヨタが考えているなら、インフラ整備を他人任せにするのではなく、自ら積極的に手がけるなどの策が欲しいところだ。
そういった取り組みの不十分さはともかく、EVとしての性能が強化され、純EVとの競争力も飛躍的に高まったのは確かだ。トヨタはその新型プリウスPHVの販売目標について、2500台/月という高い目標を掲げている。果たして顧客が新時代のエコカーとしてどのくらい好意的に迎え入れるか、動向が興味深い。