“ 錐(きり)”のように鋭くアピールする

さて、面接での留意点に入りましょう。ここまで述べてきたとおり、「自分が相手の会社に対してできること」をピンポイントでアピールすることが第一です。アピールはアバウトではなく“錐きりのように鋭く”がポイントです。

「仕事がないので何か仕事を紹介してくれませんか」は最悪です。「私はこういうことをやっていたのですが、そちらで何か関連する仕事はないですか」もボンヤリしている。

「私は○○の仕事をやっていて、今後は△△△をつくりたい。貴社でこれは手掛けていませんか?」くらい具体的なら、「じゃあウチで」とか「それなら○○を紹介します」、あるいは「△△△はウチではやってないが、これから◇◇◇をつくるから、そこでちょっと営業やってみませんか?」といった返答が期待できます。「あれができる、これもできる、私の経歴で興味を持ってもらえるところはありませんか?」と自分の言いたいことばかり話す「ノーコンピッチャー」の真逆です。

「私は御社のこういうところが他社と違ういい点だと思います。どうしてそれが可能になっているのか教えていただけませんか」などと、こちらから質問するのもいい。「いい質問ですね」と相手が話し出して場が盛り上がる。管理職には、こうした感性が必要です。

要は、「この人はこういう興味を持って来たのか。確かにウチをよく見ている」と相手に思ってもらえれば、それがアドバンテージになるのです。

ですから、履歴書と職務経歴書は一通りではだめ。訪ねる会社に合わせて中身を変えて書くのです。必要に応じて相手に合わせた補足資料も準備するといいでしょう。

私は、転職活動はある意味で、自分が子分として仕えられる親分探しだと思います。企業でエグゼクティブクラスまで上りつめた方は、ともすると自分が親分気分で働ける環境を転職先に求めるのですが、それは相手の会社が求めていることではありません。

転職とは「自分が過去できなかったこと、やりたいこと」をやりにいくのではありません。転職先の会社・社長の考える未来を実現させるために、自分のスキルや経験を生かすのです。つまり「親分のための命がけのNo.2」です。そこを間違えてはいけません。

先ほど企業はピンポイントで具体的に貢献できる人を求めていると書きましたが、多くの企業の社長はその先に良き右腕、左腕となって働いてくれる人材を求めています。

とくに人材に乏しい地方企業の社長は、大企業ならではの政治力、厳しい経験、高度な知識、中小では学べないスキルを積んだ人材を喉から手が出るほど望んでいます。つまり、大企業の方は皆さん可能性があるのです。それに応えるには、繰り返しになりますが、相手がキャッチャーミットをどこに構えているのかをしっかりと見極めることが肝心です。

恐らくこれから人材の流動化はますます進みます。中高年に限らず、またリストラに遭うかどうかにかかわらず、転職について考えて備えることは20代や30代にとっても大切です。転職ができない人は「今いる会社にとっても要らない人」になりかねません。

転職で求められるのは、スペシャリストとしての経験、知識、スキル、そして人間力・政治力です。今いる会社の名と肩書を失くしたら、はたして自分をどう表現できるのかを想像してみてください。ビジネスパーソンとしての「肩書のない自分の価値」を高めることがスタート点です。

【転職を成功させる3つの条件】

[1]転職市場を知る
ハローワークに行く、求人サイトに登録etc.

[2]“敵”を知り、自分の“武器”を知る
「相手企業」を見定めてリサーチ・「自分とは何か」を知る

[3]ただちに戦略を立て、行動する
活動の期限を決める(3カ月、半年)課題を決める生活のリズムをつくる(朝出て、夕方帰る)~図書館、喫茶店etc.で課題をこなす職歴に関する資格取得・スキルを磨く~自己啓発・英会話もアリ展示会・セミナーに積極参加話題の本を読む。時代感覚を磨ける場所を訪れる趣味・楽しみ(必須)やりたくてできなかった新しいことをやってみる

【転職活動中にやっておく課題例】

企業(社長)宛てに手書きの手紙を出す
1日1個、独自のビジネスモデルを考える
日本語の発声練習
表情筋のトレーニング(毎日)
英会話のブラッシュアップ……etc.

【当たり前のようで、できていない人多数!】

[GOOD面接]
こちらから質問・提案する~考えてきたビジネスモデル etc.
錐のようなピンポイントのアピール
社長の方針に素直
「必ず結果を出します」と覚悟を見せる

[BAD面接]
一方的に自分のことを話す~「私はこういう人間なんです!」
「何でもできます」(課長ならetc.)アピール
社長の方針にダメ出し
「入ってからでないと、わかりません」

(高橋盛男=構成 小原孝博=撮影)
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