アクア、デミオと戦うための戦略的な価格
日産は電気自動車の価値の未来形としてのスマートグリッドを堅持しつつ、e-POWERでは、クルマ本来の楽しみとしてのモータードライブを再提案した。それは気持ちの良い加速と、アクセルひとつでクルマを自在にコントロールできるワンペダルドライブである。
すべて有り物でまかなったとは言え、クルマの構成要素の中で最も高価な動力装置を2つ搭載すれば価格的にはどうしても高くなる。しかし先行するアクアとこのクラス唯一のディーゼルを搭載するデミオが170万円台で火花を散らしている以上、おのずとそこに価格を合わせなくてはならない。ノートe-POWERも最廉価モデルを約177万円としている。ただしアクアのシステムは先々代のプリウスのお古。とっくに開発費を回収し終えたユニットだからこそ安く投入出来ている。「これで採算が合うのか?」という問いに、日産の担当者は「とにかく数を売ることです」と答えた。
最後に公平を期すために、問題点も書いておく。ノートe-POWERには改善すべき点もある。ドライバーのポジションも改善の余地があるし、せっかく広々としたリヤの空間もリヤシートの背もたれの倒れ過ぎや座面の前上がり角の不足、さらにクッションの前端部のウレタン材の硬度不足で残念なことになっている。
しかし、リーフで切り拓いた「モーターの楽しさを伝えたい」という明るく前向きな目標が明確にある。そういう未来志向はとても気持ちよい。日産はこれからも「電動化」と「知能化」という2つの柱を軸に技術的チャレンジを続けていくと言う。今回の企画書を見てそれはとても応援したい気持ちになった。