「理想」を臨場感たっぷりに描いてみる
アドラー派の心理カウンセラーでもある小倉広氏は「理想ばかり追い求めている人は、『現実から逃げている』ということを直視すべき」という。
「俺はこんな会社で一生を終える人間じゃない。いつか独立したい」。こんな野心を抱えている人もいるだろう。そのために今、どんな行動を起こしているだろうか。「起業するぞ」といいつつ、何もできていない人も多いのではないか。
アドラーは「人は自分の人生を描く画家である」という言葉を残している。今の自分をつくったのも自分なら、これからの自分をつくるのも自分。自分で「行動」を起こさない限り何も変わらないことを自覚しよう。まずは独立や起業に関する雑誌を買ってもいい。独立した先輩に話を聞くのでもいい。「やる気」が起きるのを待つのではなく、先に「行動」を起こすのだ。そうすれば後から「やる気」がついてくるだろう。
ただし、現実とかけ離れた理想を掲げている場合、それが本当に自分の望むことかどうかを見直す必要もある。そのために「理想とする状態をありありと臨場感たっぷりに描いてみる」ことだとメンタルコーチとして活躍する平本あきお氏はいう。
かつて、「アメリカに留学してミュージックビデオに出たい」という理想を持った若いクライアントがいた。しかし、話を聞いてみると英語を勉強する気はさらさらなく、真剣に音楽の練習をしているわけでもない様子。そこで、理想が実現した場面をありありと描いてもらったところ、実はその若者が大切にしているのは、「言葉の壁を越えた一体感を味わう」という価値観であることがわかった。留学もミュージックビデオへの出演も、本物の理想ではなかったのだ。
それに気づいた彼はその後、国内の国際交流イベントでボランティア演奏をして、そこでタイ人と知り合った縁でタイに渡った。今では現地でタイ屋台を経営している。
「夢を叶えるには3つのカタチがある。一つは、描いた夢の規模そのままに、もう一つは規模を変えて、そして最後は、価値観を満たす叶え方。だから、こういう人も価値観を満たし『夢を叶えた人』だ」と平本氏はいう。理想をありありと描くことで、自分が大切にしている価値観に気づけたら、やる気が自然に出てくる。
アンカリング・イノベーション代表取締役。目標実現の専門家。独自に開発した「行動イノベーション」により、日本大学馬術部を2度の全国優勝に導くなど活躍。
ヒューマン・ギルド代表取締役、中小企業診断士、上級教育カウンセラー、アドラー心理学カウンセリング指導者。カウンセリング、カウンセラー養成や公開講座を行う。
小倉広事務所代表取締役。組織人事コンサルタント、アドラー派の心理カウンセラー。リクルート、ソースネクスト常務、コンサルティング会社代表取締役を経て現職。
チームフロー代表取締役、メンタルコーチ。東京大学大学院修士課程修了。米国の心理学専門大学院(アドラー心理学)でカウンセリング心理学修士課程修了。