また、07年に買収した米再生タイヤ大手のバンダグ社の技術を用いて、顧客の所有するバスやトラックなどのタイヤのリトレッド(接地面の張り替え作業)も手掛ければ、顧客は1本のタイヤを長く使えてコストを削減できる。
だが、時代の変化の波は、想像以上のスピードだ。「社会や自動車の取り巻く環境が激変するなかで、今の体制をどうやって持続するのか。経営環境が大きく変わっても、その成長と利益を確保していく形は何かと、毎日議論している」と津谷が語る姿には、8年連続世界1位らしからぬ危機感が漂う。
それもそのはず。自動車はガソリン車から電気自動車、燃料電池車に変わろうとしており、自動運転技術も急速に進歩している。クルマに空前のイノベーションが到来した今、世界ナンバーワンのタイヤメーカーもまた、ただ一途にゴム製品をつくり続けるだけの事業モデルに甘んじてはいられない。創業以来、“社会の足元”を支えてきた縁の下の力持ちがたどり着く「断トツ」の姿とは何か。「最高の品質で世界に貢献」というミッションの真価が問われることになる。
(敬称略)