成果は目覚ましい。市立図書館は同規模の図書館では貸し出し冊数が全国一位。所得にかかわらず中学3年生までの医療費は完全無料。日本経済新聞社の行政サービス調査では5万人未満の都市として近畿一位となった。債務の減少と手厚いサービスを両立させている。蓬莱市長は「当事者」の重要性を説く。

「真のリーダーとは、部下の意欲を最大化させられる人間。たとえば小野市はコンサルタントなど外部の専門家には頼りません。すべて職員自らが考える。そこに意味があるんです。『事業仕分け』や『行政刷新会議』に当事者の官僚がいないことが、最大の問題だと思います」

「改革」を叫ぶ首長は数多い。だが、議会と対立した結果、混乱が深まり、行政の停滞している自治体もある。

小野市議会では議員定数の削減が進んでいる。現在の定数は16。これは05年に2人減、2010年3月にも2人減となった結果だ。蓬莱市長は「議員と首長の対立は、首長のリーダーシップのように思われているが、それは違う。トップの説明する能力が欠けているだけだ」という。

不況の常態化が指摘されて久しい。そのなかで、高給を貪る公務員や議員が指弾を受けるのは必然だった。ただすべてを消し去り、変えることは難しい。「厚遇」に見合った働きを求めるというのは、一つの具体的で有効な方法論だろう。

人を動かす方法について、蓬莱市長は「働くことの意味を、真剣に考えさせることだ」と話した。

「私は長く『企業戦士』でした。2人の子どもがいつ生まれたのかも知らない。その働き方がいいとは思いません。ただ、官、民を問わず、自身の生き様を真剣に考え、そのために何をすべきか、という議論がなされていない。自ら創造的なチャレンジができるような仕組みをつくること。それが大事だと思います」

※すべて雑誌掲載当時

(石井伸明(名古屋)、プレジデント編集部(加西、小野)=撮影)