このようにわずか8カ月で“目に見える改革”を次々と断行し、その成果については、就任以来自らがスポークスマンとなり、精力的にメディアにも登場しアピールしてきた。

しかし、急激な変革は、組織内でひずみを生じることもあるだろう。関係者周辺はどのように評価しているのか、気になるところだ。

がんセンターOBで内部の事情に詳しい外科医は、「前院長の仕事ぶりがひどかったので、よくも悪くも政治的にゆるぎないポリシーを持つ辣腕ぶりに、理事長と気が合う先生方は喜んで仕事をしているようです」と話す。

また、あるがん専門病院の医師は、「がん研究センターは、薬剤や新しい治療の開発に特化し、リスクをはらむ特殊ながん医療こそ情報発信してほしい」と期待を口にする。

一方、嘉山氏の強烈なリーダーシップに疑問を持つ人や批判的な人もいるようだ。

「自分に反旗を翻す人は切る独断型の人」

「山形大時代からの自分のブレーンを優遇した“我田引水”な人事だ」

「内部の医師のなかには、腫れ物に触るようにおそるおそる接する人もいて、活気や活動力が鈍らないか心配」

などの声が関係者のなかからは漏れ聞こえてくる。

仙谷由人・現官房長官(当時行政刷新相)の「独立行政法人ガバナンス検討チーム」の肝いりで理事長に就任したと言われ、現政権とのパイプが生命線であるため、政局がらみで改革が失速することを懸念する意見もある。

だが、日々がんと闘う患者には、そんなことは一切関係ない。患者を第一に考えたがん医療の実践と、未来へつながるがん医療改革の手を緩めてもらうわけにはいかない。

改革は日々進むものの、国立がん研究センターは、まだまだ問題山積だろう。同センターおよび日本のがん医療を変えていくためには、強いリーダーシップを発揮してもらわなければならない。

我々もがん医療政策は、国民一人ひとりの利益に大きく関わることをきちんと認識し、賞賛や批判ばかりに終始せず、その行方を注視する姿勢を持つことが大切だ。“ガバナンスの要諦は心”を信条とする嘉山氏。その信条を原動力に、“職員の全ての活動はがん患者の為に”の徹底に向けて一丸となってのさらなる改革に期待したい。

 

 

(宇佐見利明、岡本 寿=撮影)