レゴ ブロックのユーザー層が大人へ拡大した理由とは

その後、レゴ社は従来の自前による開発手法を一新する。リードユーザーに開発メンバーになってもらいマインドストームの新バージョンを開発。重要な部品にユーザーの開発したものを採用するまでになる。

マインドストームは顧客層の拡大という意味でも画期的だった。同製品のユーザーは半分が十代の子供たちだが、残り半分は大人だという。それまで子供が中心だったレゴ ブロックのユーザー層を大人へと拡大したのである。

話は少しそれるが成人のレゴブロック愛好者は製品イノベーションへの貢献といった点で大きな可能性を持っているという研究報告がある。コペンハーゲンビジネススクールの博士課程の学生、Antoriniの博士論文がそれだ。実は私がレゴ製品でユーザーイノベーションが活発に起こっていることを知ったのは、彼女の研究報告を聞いたのがきっかけだった。

彼女の研究は次のようなものだった。Antoriniは大人になってからもレゴブロックで遊ぶことを趣味としている愛好者(AFOL:Adult Fans of LEGO)の活動に注目して彼(女)らに対しアンケート調査を行った(2005年6月実施)。そこで明らかになったのは803人の回答者のうち約34%がなんらかのイノベーションを行っていたということだった。

実践されていたイノベーションは4つのタイプに分類できた。第一に、自分が表現したい作品に必要な「部品や装飾品」を創作するというもの。第二に、スター・ウォーズやハリー・ポッター、宇宙、街といった既存の「(プレー)テーマ」にない新しいテーマ(例えばレゴの聖書)の作品群を創造するというもの。第三に、例えばモーターを組み入れることで可動式の作品を作り出すといった「組み立ての新テクニック」を創造するというもの。最後に、レゴブロック製ロボット(マインドストーム)制御用ソフトウエアで新しいプログラムを書き、これまでのレゴ製ロボットにない動きを実現するといった「コンピュータ・ネット関係」で創造活動を行うというもの。以上の4つである。

AntoriniはAFOLが実際に行った205のイノベーションの内訳を調べた。その結果は「部品・装飾品」が47.2%、「新テーマ」が24.6%、「組み立てテクニック」が13.4%、「コンピュータ・ネット関係」が14.8%だった。AFOLは多様な点でレゴ社の製品イノベーションにつながる創造的活動を行っていたのである。マインドストームは顧客層を大人へと拡大しただけでなく社外のイノベーション基盤も拡大したのだ。