コンテナ輸送の隆盛で、横浜の港としての機能はすでにベイブリッジの外側(アウターハーバー)にある大黒や磯子のコンテナヤードに移っている。インナーハーバーは使われなくなった桟橋や古い倉庫などが取り残されて寂れていくばかり。地元・横浜翠嵐高校出身の私としては、故郷に貢献するのも良かれと思って、今から16~17年前に海と親和性の高い町として横浜を再開発するアイデアを提供した。

水をキレイにして護岸や運河を整備し、横浜駅、新山下埠頭、みなとみらい、大桟橋、山下公園などをウオータータクシーやシーバスでつなぐ。ハイヒールで横浜駅に降り立った女性も、携帯電話でウオータータクシーを呼べば中華街や元町に水上から行けるのだ。

ほかにも在日米軍の横浜ノースドックがある瑞穂埠頭をカジノ化したり、使っていない港湾施設が占拠している埠頭など水際のエリアを“面”で再開発して住宅地や商業地にする構想などもある。水上交通と組み合わせて羽田空港近くに昇降場をつくれば、羽田まで約20分という便利でロケーションも最高の町に生まれ変わる。その水路の両側は京浜運河だが、用途指定を変えて住宅街として再生することができる。

その絵をコンピュータグラフィックスで描いてみせたら、港運協会をはじめ地元の人たちは「これはいい」と大興奮した。歴代市長以下、行政の反応が鈍くて随分時間をロスしたが、ここにきて新市長の下でそれがようやく動き出したのだ。

実は港湾の再開発というのは世界中のテーマになっている。魚介類レストランが軒を連ねる米サンフランシスコの「フィッシャーマンズ・ワーフ」などは早くから観光地化に成功した事例だ。ニューヨークでいえばマンハッタンのダウンタウンにある「バッテリー・パーク」、イギリスならロンドン東部の「カナリー・ワーフ」がウオーターフロントの大規模再開発エリアだ。

たとえばサッチャー政権の肝煎りで誕生したカナリー・ワーフは、今やシティのお株を奪ってイギリスの第二の金融センターになっている。旧シティとは地下鉄とハイウエーでつながっているし、シティエアポートという飛行場ができたおかげで、ヒースロー空港まで行かなくてもヨーロッパの主要な都市に飛べる。かつての寂れた商業埠頭が今や定住人口20万人の副都心である。

オペラハウスのあるオーストラリア「シドニーハーバー」も有名だ。海岸線ぎりぎりのところまでオペラハウスや商業ビルを建てて、古い倉庫を「ロックス」というレストラン街につくり変えて、すっかり世界有数の観光地に生まれ変わった。シドニーオリンピックのときにはそのすぐ後背地にあった倉庫街をダーリングハーバーとして開発し、今ではショッピング、レストラン、高級マンション、商業ビルなどが立ち並ぶ一大観光スポットとなっている。旧市街とはモノレールで10分ほどの距離である。