最初に、しばらく各人で自分の考えをマインドマップにまとめる時間があり、話し合いが始まると、紙の中央部分に重要な議題、たとえば「情報の共有」が書き込まれる。そこから「ファイル管理」「コミュニケーションの方法」など、放射状に議題を巡る各論の「枝」が分かれる。そしてさらに各論に入り、ファイルの保管場所や分類方法、管理のルールをどうしたらよいかなどが話し合われる。
皆が発言したことをマップの近くに座る者が書いていく。発言が否定されることはなく、どんな意見もとりあえず書き込まれるため、自然と提案は活発になる。
「普段意見を言わない人がよくしゃべった」と中村氏は振り返る。
「課会の活性化」について話し合われたテーブルでは、「上海と日本とのテレビ会議をしよう」だとか、「高級ホテルで朝食会をしながら課会をしよう」といった、かつてないざっくばらんな発想・やりとりが展開された。「どうせなら超高級ホテルで」と普通(口頭)の会議では言いにくい微妙なニュアンスの違いを追加で気軽に書けるのもマインドマップならでは。ちなみに活性化案のいくつかは実現済みで、朝食会も近々、某「超高級ホテル」で実現する予定だ。
決定事項の実効性が高いのにもワケがある。会議中に課題の解決策を決定する際に、誰がいつまでに何を実行するか(これを彼らは〈things to do〉と呼ぶ)まで一気に決めるため、改善のスピードが極めて速いのである。
今春、3年ぶりにこの課へ戻った吉田和弘氏はしみじみ言う。
「課の雰囲気ががらりと変わりました。前部署ではコンプライアンスを担当し、今、企業組織で起こる問題の根源は“人に関心を持たない”ことだと知りました。その意味でこの課はすごくコミュニケーションがいい。3年前では考えられない」
中村氏も、まだ発展途上なのですが、と前置きしつつ話す。
「この1年半での最大の進歩は、会議の方向性が特定の人物に引っ張られなくなったこと。以前は僕の意見や、この課でのキャリアが長い社員の存在が大きかったのですが、マインドマップでは肩書などに関係なく、フラットな関係で意見を言い合い、最後には全員が納得できる」