「専業主婦」制度はもう無理
この3年間の経済成長率はたったわずかの0.5%程度です。これでは給与はほとんど上がらないし、景気がよくなったという実感も持ちづらいのではないでしょうか。
経済協力開発機構(OECD)調べの先進国の1991年と2014年の賃金ランキングを見ると、1991年に9位(3万6152ドル)だった日本は2014年には何と19位(3万5672ドル)にまで急降下しました。注目ポイントは、1991年の上位20カ国の中で25年後に賃金が下がったのは「日本だけ」という事実です。
アメリカは4万3508ドル(4位)
→5万7139ドル(2位)
ドイツ3万5781ドル(10位)
→4万3872ドル(12位)
フランス3万1893(14位)
→4万0828ドル(15位)
イギリス3万1554(15位)
→4万1859ドル(13位)
韓国2万4308ドル(20位)
→3万6653ドル(17位)
日本は、成長率や賃金から見ればは「豊かな先進国」から脱落しつつあるのかもしれません。以前は、妻が働かなくても、収入が増えたからそれでよかった。でも、それは今や望みにくい。「専業主婦世帯」という制度が成り立たなくなってきているのです。
だから、冒頭で触れたように「共働き世帯」が今主流となっているのです。
さて、主婦が働かなければ世帯収入が伸びない時代。政府はもっと女性に働いてもらおうと例の「特典」をなくしはじめる動きに出ています。
この背景には、少子高齢化による人口の減少という大問題があります。もはや、女性に働いてもらわなければ、労働力が確保できなくなったのです。産業構造も第3次産業が主流となり、第2次産業のように筋力が重視される時代は過去のものとなりました。
では、政府がこの専業主婦の特典をどのような方向に改造しようとしているのか、それはまた次回に。
出口治明
1948年、三重県生まれ。72年京都大学法学部卒業、日本生命入社。92年ロンドン事務所長、95年国際業務部長、98年公務部長。2006年生命保険準備会社ネットライフ企画株式会社を設立、同社社長に就任。08年生命保険業免許を取得、ライフネット生命保険社長に。2013年6月より現職。最新著に『「全世界史」講義 教養に効く!人類5000年史』 (I古代・中世編、 II近世・近現代編:新潮社)など。