効率は鶏の1/5!

生産者が減少しているという問題はそうたやすく解決できないでしょうから、国内で生産される牛肉の価格は高止まりか、あるいはさらに上がっていくことでしょう。またアメリカやオーストラリアからの輸入牛肉についても、新興国での牛肉ニーズの高まりがありますから、価格が下がっていく気配は感じられません。

そもそも牛肉が高いことには理由があります。肥育期間が長いということもありますし、エサの「生産効率」という点で見ても他の動物に比べて大きく見劣りするのです。体重を1kg増やすのに、どれくらいのエサが必要かという費用対効果を「飼料効率」あるいは「飼料要求率」と呼びます。ブロイラーが2kg、豚が3kg程度で済むのに対して、肉牛は10kgも必要なのです。単純にこの飼料要求率で言えば、牛肉は鶏肉の5倍も効率が悪いというわけです。

私たちは、ファストフードのハンバーガーやファミレスのハンバーグステーキ、そして何より象徴的な牛丼チェーンの企業努力による驚くべき低価格に慣れすぎて、「牛肉はそもそも高い」ということを時に忘れてしまいがちです(もちろんスーパーに行けば再認識するのですが)。外食における牛肉ブームは、食材の価格高騰を店が受けとめきれないという消極的な理由から、そろそろ落ち着きを見せていくのかもしれません。

子安大輔(こやす・だいすけ)●カゲン取締役、飲食プロデューサー。1976年生まれ、神奈川県出身。99年東京大学経済学部を卒業後、博報堂入社。食品や飲料、金融などのマーケティング戦略立案に携わる。2003年に飲食業界に転身し、中村悌二氏と共同でカゲンを設立。飲食店や商業施設のプロデュースやコンサルティングを中心に、食に関する企画業務を広く手がけている。著書に、『「お通し」はなぜ必ず出るのか』『ラー油とハイボール』。
株式会社カゲン http://www.kagen.biz/

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