遅くても先回りしすぎてもダメ
待ち時間に手を付けたあとは、リードタイム全体の短縮に取り組もう。
鈴村氏はトヨタでフォークリフトの営業を担当したとき、リードタイム短縮と格闘した経験がある。鈴村氏が30代後半にフォークリフトの営業部門に着任したとき、納期遅れが常態化していた。調べてみると出荷するフォークリフトのおよそ3台に1台が遅れ、さらにその3分の1ほどが顧客に対して納品の約束を2度以上破っていたことがわかった。
鈴村氏は着任後ほどなくして「2年間で納期遅れをゼロにし、標準納期を現在の1カ月半から10日に短縮する」と宣言して部下や関係者を驚かせた。だが、それを1年で実現してしまう。
このとき、トヨタ生産方式の考え方をいくつも取り入れた。その一つが部品の「後補充」を徹底させたことだ。後補充とは、後工程の部署がそこで使った分だけの部品を前工程に引きとりに行き、前工程は引きとられた分だけその部分を生産し補充する方法。「販売予測をもとに製造すると、欠品や過剰在庫が起こりやすいのです。在庫はなくなった分だけその都度補充していけば、適正な量をスピーディーに供給できます」。
トヨタには「つくりすぎのムダ」「在庫のムダ」という言葉がある。必要以上に製造したり、過剰な部品在庫を抱える必要はないという教えだ。
この考え方はビジネスにも応用できる。たとえば社内会議のために使うかもわからない分厚い資料を何日もかけて用意するのは「つくりすぎのムダ」に当たるだろう。いつか使うだろうと長期間にわたって書類やデータを保存しておくのは「在庫のムダ」。必要なタイミングで必要な量の作業を行うことがムダを省く基本だ。
ムダをスムーズに省くためには、鈴村氏が重視する「ストア」の活用も欠かせない。ストアとは多段階でモノを保管する仕組み。わかりやすい例がお米だ。
たとえば、飲食店では何十キロかのお米を精米の形でストックし、毎日炊飯して、料理の注文に応じてご飯を提供している。お米のストックが減ってくれば精米店などから買ってきて補充する。