中村氏は同時に、従来品目が限られていた消費税の免税対象を一定条件下で全品に拡大する法改正を求める働きかけにも参画。これを実現に導き(14年10月から拡大)、訪日消費増大へと結びつけていった。7年間でドン・キホーテをインバウンドの勝ち組へ押し上げ、斯界の第一人者となった中村氏は戦略のポイントをこう話す。
「街を楽しむアーバンツーリズムを求める訪日客に価値を提供するには、ドン・キホーテ単独では原資もなく限界がある。事情はどの事業者も同じです。そこで行き着いたのが実行委員会方式でした。日頃のライバル同士が共通の目的に向かって、お金、労力、知恵を出し合い、地域で訪日客を呼ぶ。インバウンドという新しい市場の成長力を取り込むには、Win-Win関係をいかにつくれるかがカギです」
中村氏は新宿と同様の組織を主要都市で設立もしくは準備中で、全国連絡協議会も設置した。
地域連携について、前出の村山氏もこう指摘する。
「東京ディズニーランドは単独で訪日の目的地になりえても、例えば、百貨店も、エルメスで世界一の品揃えを誇る伊勢丹新宿店でさえ目的地になりえない。一方、“お台場にある○○”のように、地域にひもづけすると、外国人には響く。連携してエリアを売る発想がより重要になっていくでしょう」
日本人客相手では競争しても、訪日客相手では連携する。ドン・キホーテの成功法則は、戦い方の転換がインバウンドの成否をわけることを示しているといえるだろう。