佐々木氏は07年に保険会社から独立し、翌08年のリーマンショック以降も仕事は順調に推移してきたという。不況下でも、しずくをしっかりと受けとめた。その理由として、本人は稲盛哲学の中にある「1日1日をど真剣に生きる」という言葉をあげる。
「“ど ”がつくほど一生懸命に打ち込む。日々の行動が、利己ではなく、お客様のことを考えてのことなのか、“動機善なりや、私心なかりしか”と問い、ど真剣に打ち込んだことに評価をいただいたのだと思います」
伊藤正孝氏もいう。
「稲盛さんがよく話すのは、しずくが落ちてこなければ、落ちてくるところへと変化すればいいのだと」
いわば適者生存の世界。「外的環境からの挑戦(チャレンジ)に人々の応戦(レスポンス)が成功したとき、新しい文明は興る」とは、著名な歴史学者アーノルド・トインビーの言葉だ。
長い不況下で、しずくを求めて、日々の仕事に打ち込んだ人々の「応戦」の成果が、景気回復の呼び水になった。そして今、「景気はもっとよくなる」と心に描きながら、1日1日をど真剣に生きる。景気の先行きを読むとは、評論家気取りで傍観者的にご託を並べるのではなく、自ら主体的にかかわっていくことで体感していくものであると、稲盛哲学は教えているのだろう。
ファイナンシャル・プランナー。ロムルス代表取締役。
1972年生まれ。生命保険の営業を経て、2007年より現在の事務所を立ち上げ、生命保険のコンサルティングを行う。09年より盛和塾新潟に参加している。
税理士、ファイナンシャル・プランナー。
1960年生まれ。プライス・ウォーターハウス・クーパースを経て、2004年に伊藤正孝税理士事務所を立ち上げる。稲盛氏の勉強会「盛和塾」では盛和塾横浜の元会計担当事務局を務めた。