「オランダ」にこだわらずアニメやアイドルも使う

【弘兼】再建にあたり、ハウステンボス内のホテルに住民票を移し、1年の半分は滞在しているそうですね。

【澤田】当初はもっと来ていましたね。現場に来て、問題点を徹底的に洗い出そうと思ったのです。

【弘兼】経営では、経営者が現場に立つことが重要なのですね。

【澤田】もちろん現場を知ることは重要ですが、すべて自分でやるのが正解とは限りません。たとえば私は03年にモンゴルAG銀行(現在のハーン銀行)の再建を引き受けています。豊富な地下資源などを考えれば、モンゴル経済はこれから必ず上向く。しかし金融のことはわからない。このため外部から金融のプロを社長に招き、経営を一任しました。私は会長として、年2回、様子を見に行くだけですが、いまやモンゴルでトップの銀行になりました。任せるなら、優秀な人間にとことん任せる。任せないのならば、とことん自分でやる。

【弘兼】ハウステンボスの場合は、任せられる人がいなかった?

【澤田】私が社長になるまで、何人も再建に挑み、すべて失敗しています。HISの社内でも人を募りましたが、誰も手を挙げませんでしたね。私がやるしかありませんでした。

【弘兼】どこから手をつけましたか。

【澤田】まずは経費のカットです。パークの約3分の1を「フリーゾーン」に変えました。ここにはコストはかけない。入場無料ですから、店舗が閉まっていたり、イベントがなかったりしても、我慢してもらえます。その代わり、入場料の必要な場所には、満足していただけるように投資を集中させました。

(1)ハウステンボスの全景。敷地面積は、東京ディズニーランドの約1.6倍。(2)園内では1年を通じて花が楽しめる。(3)「入国」を済ませると、オランダ式の風車が姿を現す。(4)運河には船が行き交う。(5)園内にある「ホテルヨーロッパ」には船からチェックインができる。