日本流「気配り」で勝負!
財政的なこともあろうが、大田区の町工場とジャマイカのコラボ成立は「コミュニケーション」があればこそだろう。ターゲットは平昌五輪のメダルで一致している。今後は選手の要望に耳を傾け、改良を重ねていくことになる。日本の持ち味は「気配りの技術力」。
「とにかく(選手からの)ヒアリングは長く、形にするのは短く、でいきたい」
それにしても、中小企業の心意気というのか、細貝さんの矜持というのか。決して、あきらめない。素朴な疑問。なぜ?
「ははは。子どもの頃から、あきらめるのが嫌いなんです。なんていうんでしょ、あきらめるという度合いにならないのです。ダメなら、次はどうしたら、僕らの思いは達成できるんだろうという風になるんです。立ち止まって、わあわあ言うわけにはいかないんです。経営と一緒です」
細貝さんの夢は「五輪2大会連続金メダル」である。根っこには、「このまちの連携がしたい」という思いがある。夢があるから、いつも元気なのだろう。確かに苦しい時もある。でも、この5年間の時間はどうでしたか? と問えば、49歳の男は少年のような無邪気な笑顔を浮かべた。
「いつも冷静を装ってますけど、エンジョイでしたね。チャレンジャーなので、毎日、楽しいですよ」
至福の時間が終わる。帰り際、細貝さんが記した『下町ボブスレー』(朝日新聞出版)をもらった。サインを頼めば、黒字で座右の銘を書いてくれた。
<人と人との出会いが自分を成長させる>
そうなのだ。人との出会いがあってこそ、夢が膨らんでいく。オリンピックで走れ、下町ボブスレー。町工場の夢を乗せて。