「イエス」からやれる方法考える

夢の始まりは、5年前のことだった。地域活性化を目指す大田区産業振興協会職員からボブスレー製作の話を持ちかけられ、細貝さんのチャレンジ精神に火が付いた。「とにかく、やってみる」が身上。「ノー」というコトバから入るのではなく、「イエス」と言ってからやれる方法を考えるのである。

「僕は閉まっているドアは開けるべきだと思うんです。食べないで美味しくないというのではなく、現実に一歩踏み出すことが大事でしょ。歴史の無い、創業社長の気概と一緒で、“未知との遭遇”なんです。そうすると、毎日が楽しくなるでしょ」

大田区の中小企業が集結し、このプロジェクトはスタートした。当初、目指したのは、日本代表によるソチ五輪でのボブスレー採用だった。だが、同五輪前に不採用となった。細貝さんは述懐する。

「あのとき、モチベーションが下がって、もうやりたくないと離れていった人もたくさんいた。でも僕は自分の中じゃ、“次はどうしようかな”って考えた。不採用でも、残ってくれたメンバーがいたから、オリンピックを目指し続けることができたのです」

めげないのだ。仲間に感謝なのだ。海外のボブスレーの映像や情報を集めて研究を重ね、そりの性能アップにまい進した。要は、一つひとつのことを精いっぱいこなすことである。

が、昨年11月、日本代表のそりとしては2018年平昌冬季五輪でも使われないことが決まった。それでも、絶対、めげない。“それでは”と、海外のチームにアプローチした。関心を示したのが、1988年カルガリー五輪での挑戦が映画『クール・ランニング』になったカリブ海の島国ジャマイカだった。あの陸上のウサイン・ボルトのごとく身体能力が高いスポーツ選手を輩出する国である。

「エンジン力(選手の能力)はハンパじゃない。世界最強の身体能力と、世界最強の中小のモノづくりがコラボすることで、いちばんチャンスが出てくるんじゃないかと思ったんですよ」