「セカンド・キャリア」という悩み
残念である。かつてのプロ野球のスーパースター、清原和博容疑者が覚せい剤所持容疑で逮捕されて1週間余が経った。本人の愚かさはともかく、これを止める仲間が周りにいなかったことが悲しい。
スポーツは「仲間作り」だと思っている。PL学園高校時代、清原容疑者は桑田真澄さんとともに「KKコンビ」として活躍した。光り輝いていた。そのふたりの高校時代を取材していた筆者として、桑田さんの「絶縁発言」はショックだった。
桑田さんは巨人でも清原容疑者と一緒にプレーしていた。引退後も、連絡を取り合っていると聞いていた。桑田さんは1月、早稲田大学の講義で特別講師を務めた際には、清原容疑者から以前、プレゼントされたサインつきの背番号「5」の巨人のユニフォームを披露していた。
なのに、実は桑田さんは3年ほど前、清原容疑者から「もう一切関わらないでくれ」と電話で言われていたという。桑田さんの「小姑(こじゅうと)のような」言葉が、同容疑者は嫌になったのだろう。そんな中でのニュースだった。桑田さんの心中も察して余りある。
清原容疑者の野球の才能、情熱は誰もが認めるところである。結果は残した。「番長・清原和博」として、豪快なイメージを装うことに苦心し、本当の仲間づくりは疎かになっていたのではないか。週刊誌の薬物疑惑報道で離れていった仲間もいたかもしれない。
プロ選手の、引退後の「セカンド・キャリア」は難しい。もちろん、本人の努力は必要だが、そこに球界として、引退選手をサポートする仕組みがない。これは、日本のスポーツ界の共通の課題である。