介護離職しないで踏ん張る知恵とは?
介護離職をしたことによって、どんどん追い詰められていく人を数多く見てきたFさんはこう言います。
「とにかく仕事を辞めずに踏ん張れるところまで踏ん張ってほしいということです。私は知恵と工夫と努力を総動員して仕事と介護を両立させている人を何人か知っています。会社の理解を得る、介護サービスをうまく利用する、周囲の協力を取りつける……、大変ではありますが、実際にそれをやっている人はいるんです。それに……」
と言ってこんな話をつけ加えました。
「介護をしなければならない立場なのに冷酷というか非情というか、自分の仕事や生活を優先してほとんど何もせず親を放置状態にしている人もいます。独居の要介護者もいることだし、そのケースと同じだと割り切っているのでしょう。それは悲惨な状況です。排泄もオムツで放ったらかし。体に異変が生じても連絡がつかない状態で、介護職従事者としてはとても許せません。しかし、それとは対照的に、自分の人生を犠牲にして介護をしている人の苦しみも見ている。育ててくれた恩を感じ、情を持って親に接している優しい人たちです。そういう人が追い詰められていくのを見るのもやりきれないものがある。親の人生も大事だけれども自分の人生も大事。どちらかに偏るのではなく、そのバランスをうまくとるようにする。難しいですが、努力や工夫によってそれは不可能ではないと思います」