【ここがクリエイティブ
@大前・アンド・アソシエーツ コンサルタント・公認会計士 須藤実和】

 「キッズケータイ papipo!」には、他社の子供用ケータイと決定的に違う点があります。それは、とことん「子供目線」にこだわった商品作りをしているという点。そのこだわりは、同社のキッズケータイ専用ウェブサイトにも表れています。サイトは主要ターゲットである女児が好むピンク色がベースで、開くとオルゴールのような音楽が流れ出します。

子供目線での発想が重要なことは多くの人が理解しているものの、「知っている」と「実行している」との間には大きな壁があります。バンダイは、「実行」という壁を軽々と越えていますね。子供たちの間での流行を知り、彼らの気持ちを理解したうえで「その気持ちに応える商品をいち早く作り、子供たちに提供する」ことを最優先した結果が、「早く商品化できる」ウィルコムとのパートナーシップです。

ロジカルに考えれば、多くの販路を持ち、マーケティングなどのノウハウが蓄積された業界トップの企業と組むことをまず検討するでしょう。こういうわかりやすい提携先の選び方をしなかった場合、社内で稟議を通すことが高いハードルになりますが、同社にはそのハードル自体がありません。その分のエネルギーを、「お客様が本当にほしいと思うもの」を作ることに向けられます。「子供目線での発想」が組織に浸透しているのです。

BtoCの分野、特に子供を対象にした商品には、「機能的価値」だけでなく「情緒的価値」が求められます。バンダイでは、それを強く意識して、五感を大切にした意思決定を習慣化し、さらにそれを企業文化にまでしているといえるでしょう。

(交泰=撮影)