5640万円をつくるのが厳しいという人は、20代、30代から積立投資をするのが理想だ。それでもハードルが高いという場合、どうすればいいか。

「方法はいくつか考えられます。例えば60歳から75歳までの15年間は、それまでにつくった老後資金を使いながら、年平均3%で運用すると共に、年4%の定率引き出しにする。75歳以降は運用せず、月額14万円の定額引き出しにして、95歳になったとき、老後資金をすべて使い切れば、60歳の時点で3950万円あれば何とかなります」(野尻氏)

年3%の運用は、預貯金では難しいが、うまく国際分散投資された投資信託を購入することによって、視野に入ってくる。具体的には、国内株、海外株、国内債券、海外債券という4つの資産に、投資信託を通じてそれぞれ25%ずつ投資をする。

定率引き出しは毎月10万円ずつ取り崩すのではなく、原資が1000万円なら、例えば毎月1%ずつ引き出していく。資産が増えて1010万円になれば、月々の引き出し額は10万1000円。逆に980万円になれば9万8000円に減額されるが、定率引き出しは定額引き出しに比べ、運用原資の持ちが長くなる。

このように15年間、使いながら運用すれば、当初に比べ1690万円も老後資金の準備額が少なくて済む。

「ほかにも、60歳から65歳は働いて、老後資金に手を付けず、平均3%で運用すれば、準備額は3233万円に。あるいは生活費水準を現役時代の68%ではなく60%まで引き下げ、75歳から95歳までの引き出し額を、14万円から10万円に引き下げれば、準備額は2816万円まで下げられます」

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