書店に行くと、「老後貧乏」「老後難民」といった書名が目につく。『老後難民 50代夫婦の生き残り術』の著者、フィデリティ退職・投資教育研究所の野尻哲史所長は「日本の将来人口推計を見ると、2020年にかけて、65歳以上人口が増える一方、20~64歳の人口が7000万人を割り込んで減少します。高齢者サービスのニーズが高まる一方、そのサービスの担い手が減る。結果、現在と同水準の高齢者サービスを受けるとするなら、価格が今より上昇する恐れがあります」と話す。
高齢者はお金を持っているから、多少サービスの価格が上がっても心配いらないと言い切れるだろうか。確かに、個人金融資産を年齢別に見ると、高齢者が保有している割合が圧倒的に多いが、それはあくまでも今の話。これから老後を迎える50代の層は、現時点で金融資産の蓄えをほとんど持っていない。同研究所が行ったアンケート調査によると、50代男性の32.1%、50代女性の28.6%が、退職後の生活資金として用意できている金額が0円なのだ。このまま何もせずに老後を迎えたら、まさに老後難民という悪夢に直面してしまう。
実際、老後資金はいくら必要なのだろうか。「95歳まで生きると仮定し、定年直前の年収が600万円で、生活費レベルを現役時代の68%まで落としたとして必要な資金は60歳からで1億4280万円。毎月24万円の年金を65歳から受け取ると受取年金総額が8640万円ですから、差額の5640万円を自助努力でつくる必要があります」(野尻氏)。