マンションを保有すると、毎月、管理費のほかに修繕積立金がかかるが、それが適切な額かどうかは、将来の家計に大きく影響してくる可能性がある。

修繕積立金は専有面積で決まる。都心で分譲されているある物件を例にすると、一番広い、分譲価格9700万円台の82.28平方メートルの住戸では、9950円。

そもそも修繕積立金とは、建物や設備の修繕のための費用を居住者が共同で積み立てていくもの。国土交通省では「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の中で修繕積立金の目安を定めている。階数や建築延床面積、機械式駐車場の有無によって異なるが、前述のマンションでは1平方メートルあたり202円とされている。

この目安を用いると、必要な積立金は1万6620円。しかし実際の金額は9950円であり、6670円少ない。これでは足りないと感じるが、実はここにはトリックがある。売買契約時には修繕積立一時金という名目で82万2800円を支払うことになっており、これを120カ月で割ると月あたり6856円。つまり、修繕積立一時金を含めると、10年後の大規模修繕の費用は賄える計算になる。毎月の修繕積立金が高額だとマンションの売れ行きに影響することが懸念されるため、積立金の額を抑えているのだ。

ただし、気になるのは、労賃や原材料費の上昇である。原材料費が含まれる日経42種平均という指数をみると、15年3月末までの10年間で約35%上昇している。さらに労賃の上昇が加わる。分譲時に見込んだ金額より、大規模修繕の費用がかさみ、不足が生じる可能性も否定できない。資金が足りなければ、一時金として追加徴収される、または同意しない人がいて必要な修繕ができずに資産価値を損ねるなどのよくないシナリオも想定される。