今日、どんな社員でも顧客データを収集しているが、顧客の人間としての全体像を把握している社員はいない。
「葬るべき言葉があるとすれば、それは『消費者』だ」とミカルスキは続ける。「消費者」という言葉は、特定の経済的欲望に反応して、反射的に商品やサービスを購入して使用するという操り人形というニュアンスがある。それは、売り手と買い手の交流から生まれる豊かさを矮小化してしまう。だが、買い手を「顧客」という言葉で言い換えてみると、情報、アイデア、感情の幅広い交流という観点から買い手と売り手の関係として捉えやすくなる。
社員が専門性を高めるほど、企業はマーケティングをブランド、事業部門、地域、販路ごとに組織する傾向が見られる。そんな中で、社員と顧客の関係は忘れられてきた。
その結果、多くのマーケティング部門、そして企業が、顧客をますます断片的に捉えるようになってきた。グッドマンが提案した救済策は「顧客セグメントに基づくアプローチ」だ。企業が顧客を4つか5つの主要なセグメントに分類し、それを軸に製品およびサービスラインの販売指針を決める方法である。たとえば、金融サービス会社では、顧客層を次のようなカテゴリーに分類している。
〔1〕 給料は低くても感情的に満足できる職を求めるベビーブーマー層
〔2〕 高齢の両親のケアのために金銭的負担を抱えたベビーブーマー層
〔3〕 子供の教育費を貯蓄中の子育て層
〔4〕 住居購入を目指す独身女性層
次に、それぞれのカテゴリーに対して、サービス担当グループをつけ、彼らを通して会社が提供している全商品の販売をさせる。従来、商品別に担当者を配置すると、各顧客に対して何人もの担当者がコンタクトしなければならなかったところを、窓口を1つにするわけだ。そうすれば、個々の顧客の希望や需要について豊富な情報を得られるうえ、顧客のライフスタイルや生活環境の変化にどう対応すべきかを、ライバルより敏感に感知できるようになるだろう。