「保険は貯蓄にいい」は今や都市伝説

保険会社、代理店など、チャネルを問わず警戒したいのが、「貯蓄になるから」という理由で保険を勧められることである。

保険会社や代理店に対して支払う手数料は、「保険料×手数料率」で計算される。いくら料率が高くても、保険料がある程度の額にならなければ手数料は多くならない。

たとえば医療保険は20代、30代であれば高いものを選んでも月5000円がせいぜい。対して終身保険など、主に貯蓄として使われる保険では月5000円程度の保険料では30年間払っても200万円程度。1000万円水準の資金をつくるには月3万円程度の払い込みが必要になる。つまり、貯蓄型の保険を売れば、保険料がそれなりの額になり、手数料も稼げる、というわけである。

この手数料体系による弊害もある。死亡時に保険金が支払われる保険に「収入保障保険」というタイプがある。年数を経るごとに保険金が小さくなるのが特徴で、保険期間中、いつ死亡しても保険金が一定の定期保険に比べて保険料が抑えられている。子どもの成長とともに必要な保障額が減っていくという意味で合理的といえる。

収入保障保険の手数料は初年度70%程度とかなり高いが、前述のとおり、保険料が安い例もあるようだが、「手数料が3割、4割でも、月保険料が高い貯蓄型の保険のほうが売るインセンティブがある」(後田さん)。

手数料が低いことで、いい商品を知る機会を失っているかもしれないのだ。

今回、阿野さん、後田さん、清水さんに「避けるべき保険」をお聞きした中で、全否定とまではいかぬまでも共通して挙げたのが終身保険である。

いつ死亡しても死亡保険金が受け取れるが、定期保険に比べて保険料が高い。ここ数年、銀行も販売に力を入れている。銀行は預金者の口座の状況がわかるため、退職金が入った人、定期預金が満期を迎えた人に一時払い終身保険を勧めやすい。

「『預金よりずっといい保険がありますよ』と言われて1000万円の一時払い終身保険に加入。すると保険会社から銀行に5%前後の手数料が払われ、1000万円は実質950万円程度に減り、元本が回復するのは何年も先。契約者が貯金だと思い込んだまま、『孫に車を買ってあげるから解約したい』と思っても、契約から何年かは元本割れしている」(阿野さん)

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「保険は貯蓄にいい」は今や都市伝説

「初年度の手数料が50%の終身保険の例もある(図参照)。証券会社から銀行に転職した人が、保険の手数料率を見て一桁間違っているのでは? と真剣な声で電話してきた」(後田さん)