中国関連の「有事」に誰が責任を取るのか

日本、ASEAN、そしてアメリカという枠組みと中国との対立が激化した場合に、憲法問題という内輪の議論を理由に、日本だけがこの枠組みから外れることは困難です。東シナ海の平和によるシーレーン確保の最大の受益者の一人は日本であり、国内事情を理由にコミットしないことは日本の安全を他国の平和安定努力に委ねることに他なりません。

一連の議論が「説明不足だ」と受け止められる背景には、この問題の分かりにくさ、ややこしさがあります。なにしろ法律だけでも、自衛隊法、国際平和協力法、周辺事態安全確保法、国家安全保障会議設置法など、大小20本以上の法改正が行われるのです(※2)

そして、なぜ法改正をするのかといえば、問題の「切れ目」を無くす必要があるからです。尖閣諸島や朝鮮半島、あるいは東シナ海で「有事」が発生したとき、その影響範囲が日本だけに対して行われたものか、集団的自衛権に抵触するような第三者に対する攻撃なのかの「事態認定」から始まって、物事が始まりそうだという「グレーゾーン事態」から、具体的にドンパチが始まっている「存立危機事態」や「重要影響事態」といったものまで、ちゃんと法律で規定し、官邸や国会、各省庁までもが“シームレスに”対応できるようにするのが狙いです。

しかも、これらの問題には日本特有の「一体化」が混乱に拍車をかけています。例えば、あってはならないことですが中国国内で混乱が起き、日本人が多数捕らえられた場合、「駆けつけ警護」をするには、いまのPKO法では不十分です。相手国の主権を守るため中国政府の承認を得たうえで、中国人民解放軍と自衛隊が肩を並べて対応することになります。これは集団的自衛権の枠内です。

2013年にアルジェリアで発生したプラント占拠事件では、日本企業の日揮などの社員が拘束され、日本人10人を含む38人が亡くなりました。このとき無為無策だった日本政府は批難の的となりました。また今年1月、「イスラム国」(ISIL)が日本人2人を殺害した事件でも、自衛隊投入による救出は見送られています。