「関わり合い」をつくり、共に変化する
今回市が用意するのは、約75平方メートル・3LDKの住宅を2戸です。最終的に参加者がどれくらい集まるかは分かりませんが、期間中はこの住宅に共同生活してもらうことになります。部屋には、家具や家電もなにひとつ用意されていません。まずは、この2戸の空間をそれぞれ何人でどのように共有して使うのか、必要なものはどう調達するのか、そういったことから参加者同士で話し合って決めてもらわなければなりません。そこには様々な「不確定要素」があると思いますが、それこそが「ゆるい移住」の醍醐味です。
話し合いには市の職員やスタッフも参加し、一緒に考え、悩みます。中古家具は市内のどこかで借りられないか、余っている自転車はないか、短期でできるバイトの情報はないか……。移住を充実させるための方法を一緒に模索しながら、体験移住者と地域社会との様々な「関わり合い」をつくっていき、そこから鯖江というまちのありのままを感じとってもらいたい。背伸びするのではなく、まち全体が「素直になる」ということも、これからの地方創生には大切なことだと思うのです。
仕事の斡旋は行いませんが、様々な地域住民や団体と交流できる機会をどんどん提供していく予定です。そこから、新しい仕事が見つかるかもしれないし、市民と一緒に何か取り組みを始めてみようということになるかもしれません。あらかじめ用意した枠に来てもらうのではなく、参加者と共に変化していこうという姿勢が鯖江にはあります。
このプロジェクトによって、半年後に何人が定住することになるのか、その数値的な成果はまったく読めません。もしかしたら、参加者の誰も鯖江に残らないということもありえます。それでも、地域外のものを柔軟に受けいれ、対等に関わり合い、共に変化する覚悟があるということを具体的な取り組みを通じて示していくことが、地方創生に必要なチャレンジだと思うのです。